ある日、むし歯を治療しに来た
3歳の少女は力強く、
「だいっ嫌いー!!!」と
吹き抜けたみやけゆう歯科医院の
天井まで響く声で叫んだ。
こういう慟哭はうれしい。
「先生のことが嫌いなの?」と聞くと
その少女は大きくうなずき、
周りにいた2人の歯科衛生士を笑わせた。
三宅は幼稚園の頃から、
<モテナイ君>の名を欲しいままにしてきた。
あまりにもてなかったので、
いつの頃からか「キライ」と言われても、
「スキ」と言われるのとたいして
変わらない気がする様になった。
思えば、ずいぶん身勝手な歯医者である。
「イヤよイヤよも好きのうち」とは誰が言ったのであろうか。
ちょっと調べただけではよく分からなかった。
その少女は何度か「大嫌い」を連発し、
最後には「ごめんなさーい」とまで
言わせてしまった。
きっちり治療を終えた少女は
涙で濡れた頬をぬぐわずに、
手を振って帰って行った。
頑張ったねぇ。[