院長の「なんていうか」日誌

みやけゆう歯科医院のオフィシャルページ

携帯が欲しかった時

「そろそろ携帯買いませんか。」



過日、
みやけゆう歯科医院の主任歯科衛生士
[ささきちかこ]がスタッフルームに続く
階段を降りながらそう話してきた。
連休の際に連絡を取るべきかどうか
迷った揚げ句、
三宅に連絡を取る術が無い事で
彼女は相当悩んだと
恨めしそうに告げてきた。


三宅は普段、
1,診療室
2.自宅
3,実家
4,会議か出張


上記パターンしか
行動範囲はない。
出張では定期的に
「公衆電話」から三宅が
家族に連絡を取るので
なんら問題は起きないのである。


しかし、スタッフからすると
不便であるのだそうだ。
ううむ、困った。



平成7年ころ、
三宅は北海道浦河町
勤務医をしていた。
大学の伝手(つて)で
行った事の無い町で
歯医者をしていたのである。
浦河町は北海道の
日高地方の沿岸にある、
人口1万4千人ほどの町である。
地震が多いとは聞いていたが、
確かに多かった。
もっとも、その前に住んでいた
東京の方が遥かに回数があったと思う。


浦河は素晴らしい町で、
海が素晴らしく、
空は高く、
生きものに溢れた
豊かな土地であった。
住んで直ぐに気に入った。
ほんの2年程しか居なかったが、
今でも行ってみたいと思う。


浦河時代、ときおり休日の前日に
札幌まで車で行ったものである。
冬場、診療後の遅い時間に
札幌に向かう際は
なかなかどうして
緊張を強いるドライブであった。
何故かと言えば、
北海道では冬に珍しくも無いのだが
ところどころ道端に
車が落ちているのである。
それも相当のスピードで
転落した様が見て取れる。
これには正直ビビる。


もし深夜に走っていて
三宅が側溝にでも落ちたら
救援を要請する術がないのだ。
このとき三宅は、
札幌で携帯を買いに電器店に走った。
ところが、
思いつきだったので
ハンコを持っていないために
契約出来なかったのだ。



そして今に至る。
10年の時を超え、
今や国民の多くが
携帯を持っていて
当たり前の時代になってしまった。
隔世の感があるが、
そういう自分は
今や隣人より
隔世した男になってしまった。



隔世した男の
主任への返事は以下の通り。



「ささきさん、そのうちね。」





浦河町