院長の「なんていうか」日誌

みやけゆう歯科医院のオフィシャルページ

思わぬ声

「わかるー?」



先日訪れた店で
三宅は女性の店員さんに
そう声をかけられた。
なんのことやら
さっぱり分からない。
その後に続いた言葉に
三宅はもっとビックリした。


「わからないしょー、ユウちゃん?」


『ユウちゃん』とは何事だろう。
三宅をそう呼ぶのは
目上の親戚ぐらいのものである。
40を過ぎて知らない親戚でも
いたとでもいうのか。


「や・ま・ぐ・ちって言ったらわかるかなー。」


「山口・・・アアア、山口!」



山口は三宅の中学時代の
同級生である。
振り返れば中学の卒業以来
28年ぶりの再会となった。
小柄で高い声を出す
髪の長かった山口である。
確か彼女の家も
みやけゆう歯科医院から
そう遠くない場所だったはずだ。
よく同じ班になって
わりと仲が良かったと思う。



あらためて彼女の顔を
まじまじと見ると
確かに面影がある。
声も・・・そんな感じである。
ただ、明らかに凛とした
仕事の出来る
大人の女性の出で立ちだった。
そして、母親の顔もしていた。



「昔から変わらないもね。」


山口は隣にいた家人に
目配せをしてそう言う。
家人もこう続けた、


「変わらないんですか。」



「おンなじ。それがサァ、
 あんな立派な歯医者になっちゃって。」



『それがサァ』とは、
『あんな』とは一体どういう事か。
中学生から変わらぬ俺に
なにか問題があるのだろうか。
・・・あるやも知れぬ。



それにしても『ユウちゃん』と
中学時代に山口から
呼ばれてた事はないと
記憶しているのだが、
なぜにユウちゃんなのだ。
『三宅君』だったはずだ。




三宅が北見に帰ってきて
中学以前の友人に会う機会は
そう多くない。
中学校時代の恩師とは
年賀状を交わすだけだが、
クラス会を開いても良いかなと
思わされる出来事だった。
ともかく嬉しいものである。



その店を離れる前に
山口と2、3言葉を交わしたが、
彼女の今の名前は聞かなかった。
今度飲みに誘おうかと思ったが、
なんていうか、言わなかった。


最後に彼女はまたまたこう言った。



「それじゃあね、ユウちゃん。」




だから、そう呼ばれてなかったってー。
 




これは幼稚園の頃の三宅