院長の「なんていうか」日誌

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ふたたび鮭について


鮭が遡上する川辺で
三宅家の目に入ったのは
『本流から外れてしまった鮭』であった。


鮭は力強く川を登ってくるのだが、
方向を誤ったのであろう。
ほとんど陸上に上がり
息を切らしているので
その鮭の命運は自ずと知れていた。



諸行無常である。
しかしこういう事もあるのである。
三宅の娘は


「抱き上げて川に戻したらどうかな。」


と懇願のまなざしで
三宅に説いたが、


「自然の摂理だから仕方がない。」


と我ながら珍しくイイ事を言った。
けだし名言である。
我ながら感動ものだが、
娘は納得がいかないので
重ねて三宅に言う。



素手で触ったらだめかな。」


「うーん・・・」



今日はいい日だ。
子ども達に命の厳しさを
教える事が出来たのだ。


ところが、




近くにいたカヌー体験申込所の男性が
ひょいっと鮭を持ち上げ、
川に帰してやったのだ。
カムバックサーモンである。


娘は感激してその男性に、


「ありがとう、ありがとう。」


と心からのお礼を何度も言い、
男性は照れ臭そうに
「へへっ」と笑った。



そうして密かに
三宅は家人の耳元で
こう伝えた。




「オレの言った事が台無しだ・・・。」