三宅は子どもが好きである。
『中身が変わらないから』と
誰だったかに言われた事もあるが、
自分が子どもを持って
さらに好きになった。
しかしあろうことか、
好きで選んだ『小児歯科』の仕事は
子どもに嫌われ[かねない]
数少ない職業であった。
4歳のRちゃんは治療のために
みやけゆう歯科医院にやってきたが、
いつも三宅を見て怖がり
泣き顔ばかりである。
しかし、
ある日彼女の表情は違っていた。
穏やかに笑みを浮かべ、
瞳はまさしくエンジェルアイで
光り輝いていた。
「どうしたの?」
と思わず失礼な質問を
母親と共に投げ掛けるが、
Rちゃんはただ微笑み
母親は首を傾げるばかりである。
いつも大泣きで
治療をしていたのに、
ケロリと注射もこなして、
さらに微笑むのだった。
子どもを治療していると
時としてこういう場面に出会う。
三宅がどうこうしたものではなく、
子どもの成長を垣間見る瞬間である。
小児歯科はここが醍醐味なのだと思う。