「お願いします、お願いします」
そう云われて三宅はうろたえた。
歯医者人生でこういうのは初めてである。
先日もこのブログで紹介した子どもが、
今回も治療の際の麻酔の痛さを心配して
三宅に懇願するのである。
「今日は麻酔あるの?」
この子どもからの質問は大変厳しい瞬間である。
しらを切るかウソを言うのも手だが、
三宅は本当の事を伝える様にしている。
「うん、麻酔する」
「ウワァァァァ・・・」
悲観に襲われる子どもを見るのは
ちょっと辛い。
次の瞬間に彼は三宅に手を合わせてこう言った。
「お願いします。痛くない様にしてください!」
麻酔をするなとは子どもに言われるが、
『痛くない様に』とはなかなか言われない。
しかも手を合わせ敬虔な信者の様に
三宅に手を合わせてスリスリこすりながら
「お願いします、お願いします」
と懇願するのである。
こんなの初めて!ちょっと困ったナァ。
もしかして神様はこういう気持ちか?
可笑しいやら愛おしいやらで
なんだか涙でて来た。
歯医者が泣かされたなんて聞いたことがない。
ところが実際に麻酔をすると
彼は多少の同様を見せただけで
ケロッと乗り越えてしまうのであった。
「あー、痛かった♪」
なんて可愛いツワモノだろう。