久しぶりに映画を家で見た。
『大人向け』映画だ。
監督は「ニュー・シネマパラダイス」を撮った人である。
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ヴァージルは初老の美術鑑定士。
鑑定の依頼が耐えない優秀な男であったが、
対人緊張、特に女性と接する事がほとんど出来ない。
自ら開催するオークションで
共謀する画家と半ば詐欺的に『格安で』競り落とした
女性の顔が描かれた絵画ばかりを、
自宅の隠し部屋一面に張り付け眺め
恍惚に浸る事が彼唯一の喜びであった。
そんな彼に1本の電話がかかってくる。
ある若い女性が依頼者で、
他界した両親の遺品を競売にかけたいというものだった。
しかしいつまで経っても
ヴァージルは依頼者の女性に会うことが出来ない。
前代未聞の依頼に困惑しながらも
次第にその依頼者に興味を抱くヴァージル。
彼は女の屋敷に忍び込む。
依頼者の姿を見るために・・・。
◆
基本的に映画には安息を求める三宅であったが、
主役のジェフリー・ラッシュという俳優さんが
好きなので観る事にした。
どうしてミステリアスな映画であった。
全般にトーンの抑えられた色調で、
深みのある映像だ。
映画に登場する美術品や小道具がどれも美しく、
観ていて飽きさせない。
さらに展開がサスペンス映画の様で、
ハラハラしながら固唾をのんで観ていた。
以下ネタバレ。ご注意を!
ヴァージルの虚無感が息苦しさを
上手く表現しながらも、
オークションや美術品の解説をする
彼の口調がチョーカッコ良くて惚れ惚れする。
依頼人が登場したとき『ンなバカな』と思った。
きっとヴァージルも驚いただろう。
観ているうちに気にならなくなった上に
ヴァージルと同じ様に目が離せなくなる。
そうして彼は恋に落ちてしまうのであった。
いくつも気にかかる点があるにも関わらず、
ついついこの鑑定士を応援したい気になっていた。
最後に見事な展開がある。
それが2回。
注意深く観ていないと、
陰鬱な映画に思えるような後半の展開に、
「うわー観て失敗したか?」と思ったが、
三宅はラストシーンを観て考え方が変わってしまった。
劇中で<いかなる贋作の中にも本物が潜む>という
彼の言葉がこの物語に大きな意味を持たせている。
これは意見が分かれる作品であろう。
一緒に観ていた家人とも意見が分かれた。
バットエンドに見えるラストなのだが、
これはすごいハッピーエンドなのだと三宅は思う。
その証拠にタイトルの原題が
[The Best Offer(最高の申し出)]なのだから。
うーん、男だからそう思うのかも知れぬ。
それにしても大きく余韻の残る映画であった。
2度目をいつか観よう。