よく「あの患者様はどうしているかナァ」と
想いを巡らせることがある。
どうしても思い出深い診療は
あるのであった。
「先生、詰め物がポロっと取れたのよ」
と医院に来てくれたJさんは
にっこり三宅に伝えた。
取れたのは詰め物ではなく、
ご自身の歯だったのだが
それは問題ではない。
「あら〜、魔法の様ね」
治した後にそう言って
笑いながら帰っていったJさんは
どうしているだろう。
そう思っていたら
風の便りにJさんが亡くなったことを聞いた。
前回三宅の医院に来た後すぐに
倒れたのだそうである。
思いがけなくて
ちょっと泣いた。