その常連の少女は2歳から
みやけゆう歯科医院にやってきた。
母親の片腕に収まっていた彼女は
ずいぶん小さく見えたものである。
それから16年。
あっという間に成長して高校に入り、
この卒業して進学のために
北見を出ることになった。
身長は三宅に迫るか超しており、
あどけなさが残る以外は
もう大人になりそうだ。
そして今日は進学地への出発を前に
三宅に挨拶に来てくれたのである。
これはたまらん。
「いままでありがとうございました」
もはや嫁に出す父親の気持ちである。
出したことないけれど。
寂しい。
とっても寂しい。
彼女は大きくなったが、
三宅は元のままである。
それも問題かと思うが、
ともかく春は寂しい。
彼女からもらったメッセージカードには、
10年も前にその子からもらった
『表彰メダル』のミニ版がついていた。
「お世話になりました」
とにもかくにも春は・・・。