「先生、誰だかわかりますか?」
はじめてみやけゆう歯科医院にいらした
患者様が開口一番にこう言った。
そう言うからには
三宅が知っている方に違いない。
えーと・・・と思った刹那、
三宅はたじろいだ。
「先生!」
彼女は三宅の子どもが全員お世話になった
幼稚園の先生であった。
恩師である。
泣きながら幼稚園に行きたがらない我が子を、
先生に渡して一目散に園を後にしたのが、
ついこの間のようだが、
もう15年以上前のことだ。
先生は三宅を覚えてくれていて、
歯科に来てくれたのである。
その後昔話と子どもの現状についてで
15分も話し込んでしまい、
ちょっとトリップしてしまった。
歯科衛生士に先生を任せ、
15年以上の走馬灯にかられた三宅は、
院長室に戻って泣いた。