「この子、家に帰って『歯医者ごっこ』をするンです」
ある日三宅が子どもの
治療をしていると
そんな話をお母様がしてくれる。
歯科の治療を嫌がる子どもでも
家に帰って『歯医者ごっこ』に
興じる子どもの話は
チラホラと聞く事があるのだが、
小児歯科医として
嬉しくなる話である。
母親は続ける。
「口の開かない人形に『ほら開いて!』なんて言っています」
専門的なネタで申し訳ないが、
歯科において子どもが
口を開けないのは悩みのタネである。
その苦しい場面をマネされると
歯医者としては
えらく可笑しい。
「あまりに口を開かないので父親に[患者さん役]をさせてます」
本当に申し訳ないが、
可笑しくてしょうがない。
思わず衛生士と顔を見合わせる。
我ながら可笑しすぎて
手元が狂わないか心配である。
『歯医者ごっこ』のキモは
「ハイ、咬んでくださーい」だと思うので
お試し戴きたい。