院長の「なんていうか」日誌

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「魔法にかけられて」(ネタバレ注意)

魔法にかけられて 2-Disc・スペシャル・エディション [DVD]

魔法にかけられて 2-Disc・スペシャル・エディション [DVD]


昨年日本で公開された
ディズニー映画。
ポスターにある通り、
映画の一部分にアニメーションと
実写が折り込まれた作品だ。


「アニメと実写」という手法は
以外に古くディズニーだと
1964年の「メリー・ポピンズ」が有名だ。


しかし、最近のディズニー・アニメは元気がない。
これといったヒット映画はすべて
ピクサーの制作したものばかり。
ピクサーはディズニーに買収されたとは言え、
もともと別会社である。


商品展開でも過去のプリンセスを強引に
列挙するだけのものだ。
日本のウルトラマンの如く
過去の遺産を食い潰すだけの
有り様になってしまっており、
多少ならずとも残念に思っていた。


この「魔法にかけられて」も
なんだか危険であり、
観ればがっくりしてしまいそうで、
それとなく避けていた。



先日この映画が
WOWOWで放映されていることを知った。
まあ、WOWOWへの投資に対して
少しでも元を取り戻したいと言う
セコい考えが頭をよぎり、
危険を省みず
観てしまったのだが、
三宅の杞憂はいらぬ心配であった。

       ◆


おとぎの国<アンダレーシア>に住む
[ジゼル]は、夢に見た王子との出会いを
心待ちにしていた。
果たして王子と出会ったジゼルは
結婚の約束をし
王女様になることに。


ところが、
王子の義母[ナリッサ]は自分の王位が
ジゼルに取られることを恐れ、
彼女を魔法の井戸に落としてしまう。
井戸の底にあった世界は、
「永遠の愛などない世界=現実のニューヨーク」
であった。

       ◆


冒頭はアニメーションで話が進行し、
ニューヨークから実写である。


アニメーション部分は
セル画を用いた手書きだという。
これはリトルマーメイド(1989年)以来のことで、
コンピュータでアニメを制作する時代なのに
よくもまあ、手のかかることをやったものだ。
しかし、アニメパートのキャラクターは
生き生きとした動きを与えられ、
優しく艶のあるキャラクターとして完成している。
こと最近の<元気ないディズニー・アニメ>の中で
白眉であろう。


全編に渡って白雪姫やシンデレラなどの
誰もが知っているシーンから
マニアックなものまで、
丁寧にストーリーに乗せてある。
こんなパロディ、オマージュを自前で出来るのは
歴史あるディズニーならではだ。
ここまでうまくやられてしまうと、
他の映画会社はディズニーのパロディなど
やり難かろう。



そして、本当に素晴らしいのは音楽である。


オープニングからはじまる
「True Love's Kiss」(邦題:真実の愛のキス)は
白雪姫をモチーフにしたものだろうか。
どこか懐かしい芳醇なスコアだ。


そして中盤に歌われる
「That's How You Know」(邦題:想いを伝えて)は
リビアンなミュージックで、
映画「リトルマーメイド」にある
「Under the Sea」を彷彿とさせる。
それもそのはず、作曲家はリトルマーメイドと
同じアラン・メンケンであり、
劇中では曲の最中にリトルマーメイドと
同じシチュエーションを再現してみせている。


これはリトルマーメイド好きにはたまらない。
おまけにリトルマーメイドの主人公アリエルの
声を担当したジュディ・ベンソンという女優が
おもいっきりカメオ出演している。
音楽を注意深く聴いていると、
ジュディの出演時にはリトルマーメイドの
メインテーマの旋律が流れるという
心憎い演出だ。
ディズニーがリトルマーメイドを
大切に思っているのが分かる。


すべての楽曲が画面と融合しており、
映画に音楽がどれほど重要か
この映画でつくづく思い知らされる。



[ジゼル]はお姫さまになれるのか。
<永遠の愛>はどうなってしまうのか。


それがこの映画の静かなテーマであろう。
ラストがどうなるかは是非ご自身でご覧戴きたいが、
こんなに誰もが幸せで、
爽やかなラストシーンは
三宅の知りうる限り
ディズニーでも
そうそうないと思う。



これがディズニーの底力だ。





[ジゼル]は三宅にとって
忘れられないプリンセスになった。