「歯科受難」ではない。
「シカ受難」である。
東大寺・大仏殿から出ると、
寺の境内にはシカが闊歩していた。
1000頭を超える奈良公園のシカは
野生であり天然記念物である。
予てよりシカがいることを
予告されてきた
三宅の子どもたちは、
シカに会うのを楽しみにしていた。
三宅はみやけゆう歯科医院を
開業する前に奈良に訪れたことがある。
奈良公園を歩いて東大寺まで行ったものだが、
途中、シカせんべいを買うないなや、
数頭のシカに囲まれてしまった。
シカはお辞儀をしながら
「せんべいよこせ」と
迫ってくるのである。
おまけに背後のシカに
背中を角でつつかれる有り様で、
一目散に逃げ出したのだった。
いま思い出しても怖い。
そんな記憶から、
「子どもたちがシカに囲まれたらどうしよう。」
という不安があった。
しかし、現実に起きたことは、
「三宅の子どもがシカを追い回す。」
であった。
別に親の敵(かたき)を取ろうと
思った訳ではない。
純粋に[シカせんべい]を
食べさせたかったのである。
大仏殿ではぐったり疲れていた
娘はがぜんやる気を出して
散々シカを追い掛け回したのだった。
この日、
奈良公園を訪れた観光客は
日頃より多く、
シカもシカせんべいの食べ過ぎで
食べなくなっていたと
ニュースで言っていた。
天然記念物であるシカも
ご苦労様である。