むかし通院していた
8歳の少女「アイちゃん」が
三宅にこう聞いた。
「みやけゆうはさ〜、どうして三角なの。」
「三角かい?」
三宅の顔がアイちゃんには
三角に見えるのだろうか。
もしくは、
あまりにむし歯の治療や、
衛生指導に熱心なあまり
目が三角につり上がっているのではないかと、
鏡を見に行こうとした瞬間に
アイちゃんは続けて聞いた。
「家の中がが三角でしょう。」
「ああ、この建物ね。」
建物や、この場所を指して
[みやけゆう]と呼ばれることが時折ある。
「どうして[みやけゆう]に来なくちゃならないの。」とか、
「また来週も[みやけゆう]しよう。」と
名詞か動詞かわからない使われ方をする。
待合室で自分のフルネームが連呼されるのは
なんだか妙な感覚だ。
みやけゆう歯科医院は三角屋根で
吹き抜けている。
この吹き抜けがアイちゃんには
不思議に見えるらしい。
「どうして?」
「ずっと前に先生が行った
喫茶店ていうか、お店ががこんな
三角の屋根をしてたの。
そのお店が好きだったので
(マネして)三角の屋根なの。」
「ふーん。」
むかし北見の東にあった
喫茶店は三角な屋根で店に入ると
天井まで吹き抜けた
ログハウス風の
店舗であった。
思えば、
中学生の時に家族でそのお店に行ったことが、
みやけゆう歯科医院の
三角屋根のルーツになったのである。
アイちゃんは間髪入れずに
口を開いて三宅にこう云った。
「みやけゆうってさー、結婚してンの?」