昨日はこの地区の多くの歯医者が
集まって勉強会であった。
三宅が卒業した大学の教授が
特別講演をしていただいたのだった。
こともあろうに三宅が
この教授の講演の座長を任され
歯医者たちの前に立ったのである。
これは大役である。
座長の最大の仕事は
『講演に対する質問がない場合、座長が質問する』
であり、それを三宅がやるのであった。
教授の講演が終わって
質問タイムになり、
三宅がマイクで呼びかける。
「えー、ただいまの講演に関しまして
何かご質問はありますでしょうか。」
会場は水を打ったように静かになり
だれもが息を潜め、
三宅は正直「ぞっ」とした。
このままでは三宅が座長として
質問をするのである。
しかし、なにも質問を用意していなかった。
教授の講演を感心するばかりで
ぽっけーんと何も考えなかったのである。
静かな会場で焦る三宅。
妙な間がながれた矢先に、
先輩の先生が助け船を出してくれたのだった。
「えー・・・、誰も質問しないようですので私が・・・。」
ああ、助かった。
今度から座長を任されても
動じないよう研鑽します。
