小さい頃の憧れは『秘密基地』だった。
昭和の男ならそうだろう。
世を忍ぶ姿の基地などと、
ロマンあふれるキーワードだ。
そうして秘密基地の建造は
執り行われる。
基地の素材は布団か座布団である。
自分が潜り込む部分を作り、
必ず『蓋』をする。
オープンではいけない。
秘密なのだから。
懐中電灯があればなおさら良い。
昭和の懐中電灯は今のLEDとは違って
暗く黄色味があり、
これまた秘密めいていた。
そうして出来上がった基地に
しばらく潜り込む。
兄弟や従兄弟と秘密基地に
隠れていたことも多いが、
夏場は困難を極めた。
いつしか秘密基地を作る年齢を脱した。
そう書くと何か夢を捨ててしまった様に
思えないでもない。
しかし夢を捨てきれずに、
三角形の歯科医院を作った。
実は秘密なのである。