院長の「なんていうか」日誌

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「はやく」


M君は最近通院する
5歳児である。


男の5〜6歳は
「怖がり」であるというのが
三宅が思う男児の感触だが、
M君もとても診療を嫌がって
先日も診察台に登ろうとしない。


漸くM君が診療台に上がると
「だっこ」と言って
スタッフに抱きついてしまった。
「あっ。」



これは珍しい。
診療を嫌がる子が
母親に抱きついて離れないのは
よくあることだが、
スタッフに抱きついて
離れない子どもは初めて見た。



実際に診療をはじめてみると
M君は大きく動くようなことは
しなかった。
ただ常に彼の手だけは
母親かスタッフの手や腕に
触れることを欲した。


「もう終わる?」


「銀歯作ったらね。」



とM君と三宅の会話の後、
彼はおもむろに
三宅の腕を[そっと]掴んで、


「はやく。」


とつぶやいたかと思うと
彼は次の瞬間に
エンゼルアイを輝かせながら
三宅の頬に優しく触れて、


「はやく・・・。」




普段、子どもに泣かれても
ほとんど動じない三宅も
これには動揺した。



はふぅ。