院長の「なんていうか」日誌

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名医の影


「最後に歯科にかかられたのは
 いつごろでいらっしゃいますか」


という三宅の問いに、
「10年くらいかしら」と
その患者様はお答えになった。


よくよく伺うと
ずっと通っていた歯科医院が
閉院したために、
ご自宅からちょっと離れた
三宅の医院まで来たのだった。



「ずっと○○先生に診て頂いていたんだけど、
 亡くなっちゃってねぇ・・・」


残念そうに語るそのご婦人は
亡き歯医者を偲んで
しみじみしている。


もはや患者様の中で
絶対的な歯医者が存在するのである。
できるだけをさせて頂く他はないのだが、
なんていうか「敗けが決まっているのでは?」と
頭をよぎる。


こういう時はもう腹を括って
治療に当たる他はない。
名医の影を追うのは
なかなか勇気が必要だ。


いつか自分もそう患者様に
思われる日が来るだろうか。