先日上京した際に行った『高畑勲展』に感激した三宅は
ディスクを買って鑑賞した。
我ながら全くもって単純である。
三宅がこの作品を見たのは2回目。
その1回目は2000年の地上波テレビ放送の時である。
それ以降1度も地上波で放映されたことはない。
◆
山田家は5人家族。主人「たかし」と主婦「まつ子」の結婚式から、
長男「のぼる」長女「のの子」そして祖母の「しげ」が繰り広げる日常茶飯事。
失われた天空の城を探したりはせずに、
松尾芭蕉などの俳句を織り交ぜて歳時記のように話は進行する。
◆
作画はコンピュータによるデジタル彩色であるが、
水彩風に見せるため通常の3倍の手間がかかっているのに
そうは見せていない。
しかし冒頭のスピーチシーンでは驚くほど絵が動く。
ジブリ作品の中で第2位の作画量なのだそうだ。
原作の4コマ漫画を忠実に再現しているが、
そのキャラクターたちの細かな演技に驚かされる。
例えば、まつ子がテレビを見ながらタンスの扉を
「閉めそこねる」シーンがさりげなく入っている部分などだ。
家族がテーマだから親子とか、
夫婦とかの関係性を問う場面がいくつかあり、
グッと胸がつまるところもある。
これは19年前に見た自分では判らなかった。
大人向けの作品だったのだと今更思う。
個人的には父親の立場というか、
どこか孤独を背負っているところにスポットを
当てているのがすごいと思った。
そういう作品はあまり聞いたことがないのである。
興行収入的に大失敗だったこの作品は、
のちにビデオ販売でようやく元を取ったと言われている。
それが地上波で放映されない理由の一つだろうか。
のちにこの作品の手法が
『かぐや姫の物語』につながっていくし、
本編中にも竹取物語シーンが登場する。
高畑勲監督はこの時にもう
作品の構想を持っていたのは明白だと思う。
切なくも暖かい。
そんな高畑作品だ。