院長の「なんていうか」日誌

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ホーホケキョとなりの山田くん(1999年 日本)

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先日上京した際に行った『高畑勲展』に感激した三宅は

さっそく高畑勲作品の「ホーホケキョとなりの山田くん」の

ディスクを買って鑑賞した。

我ながら全くもって単純である。

 

三宅がこの作品を見たのは2回目。

その1回目は2000年の地上波テレビ放送の時である。

それ以降1度も地上波で放映されたことはない。

 

         ◆

 

山田家は5人家族。主人「たかし」と主婦「まつ子」の結婚式から、

長男「のぼる」長女「のの子」そして祖母の「しげ」が繰り広げる日常茶飯事。

失われた天空の城を探したりはせずに、

松尾芭蕉などの俳句を織り交ぜて歳時記のように話は進行する。

 

         ◆

 

作画はコンピュータによるデジタル彩色であるが、

水彩風に見せるため通常の3倍の手間がかかっているのに

そうは見せていない。

しかし冒頭のスピーチシーンでは驚くほど絵が動く。

ジブリ作品の中で第2位の作画量なのだそうだ。

 

原作の4コマ漫画を忠実に再現しているが、

そのキャラクターたちの細かな演技に驚かされる。

例えば、まつ子がテレビを見ながらタンスの扉を

「閉めそこねる」シーンがさりげなく入っている部分などだ。

 

家族がテーマだから親子とか、

夫婦とかの関係性を問う場面がいくつかあり、

グッと胸がつまるところもある。

これは19年前に見た自分では判らなかった。

大人向けの作品だったのだと今更思う。

 

個人的には父親の立場というか、

どこか孤独を背負っているところにスポットを

当てているのがすごいと思った。

そういう作品はあまり聞いたことがないのである。

 

興行収入的に大失敗だったこの作品は、

のちにビデオ販売でようやく元を取ったと言われている。

それが地上波で放映されない理由の一つだろうか。

 

のちにこの作品の手法が

かぐや姫の物語』につながっていくし、

本編中にも竹取物語シーンが登場する。

 

高畑勲監督はこの時にもう

作品の構想を持っていたのは明白だと思う。

 

切なくも暖かい。

そんな高畑作品だ。