連日30度を超える気温で
雨が全く降っていない北見市。
みやけゆう歯科医院の草木もカラカラなので、
朝晩に水撒きをするのが
院長の仕事であった。
ある朝に水撒きから戻ってきた三宅は、
自分の胸ポケットに入れていた
携帯電話が忽然と消えていることに気がついた。
『気付けよ!』って自分でツッコミを入れながら、
三宅がどこかに置いたのではないかと、
医院の中や自宅を探し回るが全く見つからない。
少々蒼白になる自分を感じたが、
三宅が物をなくすときは
いつもそんな感じで全く心当たりはないことがほとんど。
しかし、
確かに胸ポケットに入れて
水撒きに出かけたのに・・・水撒き!?
家族の携帯から電話をかけてもらって、
三宅は花壇に走った。
果たして花壇からかすかに呼び鈴が
聞こえるのである。
花壇にあるキンセンカの茎が、
そっと三宅の携帯を抱えてくれており、
思わずため息が出た。
呆れる家族。
安堵すると同時に、
なぜそんなところで携帯を
キンセンカに預けた歯医者がいたのかが
甚だ謎である。