院長の「なんていうか」日誌

みやけゆう歯科医院のオフィシャルページ

絶食

人様に言うほどでない話をするのだが、
三宅は絶食をしたことがある。


「絶食」とは、
食を絶つということである。
<絶対に食べちゃいけない>
という解釈でもイイと思う。


「ゼッショク」


なんだか寂しい響きだが
寂しいだけではない。



三宅はもともと大食いであった。
米を食べたいだけ食べるので、
知人の外国人に


「You are lice eater !」(キミは米食いだ!)


と言われる程だった。
しかし、歯科医院開業からまもなくの夜、
突然腹痛で悶絶しながら動けなくなってしまった。
<背に腹は代えられぬ>とは言うが、
おなかが痛いと、
ただお腹をかばって
うずくまるしかないのである。


診てくれた主治医の兄は、
三宅の腹部レントゲンを見ながら、
「おまえは食べ過ぎだ。しばらく点滴に通わなきゃダメ。」
と怖い顔で言った。
この<点滴>の意味は、
<おまえはこれから数日間、絶食だから
点滴でビタミンと糖分を補給するの。>
というものであった。


腸の動きが極めて悪くなったのである。
「腸が詰ったら開腹だよ。」と
兄は悪魔のような事をさらりと言った。
斯くして三宅の「第1回絶食生活」のはじまりである。


1日目はなんということもない。
問題は2日目以降である。
2日目の点滴の最中から走馬灯のように
食べ物の事が頭から離れないようになった。


ビフテキ・・・・
てんぷら・・・
エビチリ・・・・
豚の角煮・・・


などと、普段食べることのないような
脂っこいものばかり目に浮かぶ。
欲しても食べてはいけないのだから、
これはたまったものではない。


3日目以降はこれがますます酷くなり、
仕事以外のときは常に食べ物のことを
空想するようになった。


10日目だったか<重湯>の許可が出て、
ひとくち口に入れた時、思わず「おいしい」と声をあげた。
あんなにも米の味は甘露なものだっただろうか。
なんて食べ物は有り難いものだと
しみじみ思い知らされた。


この時から三宅は満腹に食べることをやめた。
満腹の満足を得るより、
絶食のほうが真に恐ろしく、
ご遠慮したい。


しかし三宅は1つの言葉を憶えた。



「空腹は最大の美食なり」