三宅の高校時代のテーマは『炊事』であった。
高校から自宅を離れ間借りしたので、
当然自炊生活である。
しかし三宅高校生は未熟そのものであり、
自炊は愚か食事をすることも疎かになった。
結果として夏休みまでにはゲッソリ痩せてしまい、
自宅に帰った際に見かねた父親は
即座に三宅を寝かせ栄養剤の点滴をした。
父とはいえ医者は怖いと
点滴されながら思った。
そんな一件からテーマが炊事になる。
コンビニなどまだ普及していない時代の話だ。
下校時にスーパーへ行き、
お決まりのホウレンソウかジャガイモを買い、
シャケを焼くか豚肉を炒めるかが
概ねのパターンであった。
米を炊くことに苦はなかったが、
やはりというか洗い物が嫌で
皿を溜め込んでは洗う、そして溜める、を繰り返した。
月に1回はハンバーグを作り、
闇鍋の様な鍋を作り、
鶏のささみをクリームでソテーする技も覚えた。
3年生になる頃には炊事に困らなくなったが、
進路には困った。
この話は墓前でも父には内緒である。