今日の診療も無事に終え、
娘と本屋に行った。
待合室の雑誌類を買うためである。
「あのう・・・」
「はい」
白髪まじりのの女性が
三宅に話しかけて来た。
「『日本百名山』の本を探しているンですけれど、置いてありますか」
『やってしまった!』
この御婦人は三宅を書店の店員と
見間違えたようである。
最近はなかったが歯医者になってこのかた、
よく小売店の店員さんに間違われるのである。
さあ『日本百名山』はどこだろう。
いやいや三宅は店員さんじゃないのである。
それを伝えようか。
でもこの御婦人が恥をかいてしまうかも知れぬ。
そう思うと一緒に探すべきか。
歴史書やマンガコーナーは詳しいのだが、
さあ『日本百名山』とはどんな分野なのだろう。
「・・・すいません。ちょっと分からないのですが」
御婦人は何も云わずに
三宅から離れて行ってしまった。
真実を伝えるべきだったか。
一緒に探すべきだったか、
店員を三宅が呼ぶべきだったか。
それともネクタイで本屋をウロウロするのを、
まずやめた方がいいだろうか。
とりあえず古事記でも読もう。