「マシュウ・カスバート、それ誰なの?男の子はどこ?」
みっともない服を着て、目をキラキラと輝かせた
赤い髪を長いおさげにした女の子に目を止めると、
びっくりしたマリラは叫んだ。
「男の子はいなかったよ・・・」
情けなさそうにマシュウは言った。
「そんなはずはないですよ!」
マリラが怒気を込めてマシュウを責める。
このやりとりの間に赤い髪の女の子は、
すっかり顔から血の気が引いていた。
「あたしがいらないのね!」
アンの叫び声に驚く2人。
マシュウも妹のマリラもストーブ越しに
しかめっ面して顔を見合わせるだけで言葉もない。
アンは机に両腕を投げ出し、
その中に顔を埋めておいおい泣き出した。
◆
いきなり第2話にして修羅場である。
当時三宅がどう思って観ていたかは憶えてないが、
アンの目線で見ていたはずなので、
とても苦しい展開に困っていただろう。
孤児院から意気揚々と連れてこられて、
『実は違いました』では叫ぶしかない。
今の三宅では大人目線でしか見ることができず、
アンに泣かれて自分も涙目。
困ったマリラが赤毛の子の名前をぎこちなく聞くと、
女の子は熱心にこう言った。
「あたしのことコーデリアと呼んでくださらない?」
可笑しい。修羅場なのに
お姫様のような名前で呼べという女の子。
色々と驚かされるマリラであったが、
それはまだ序の口なのであった。
まだ涙目。