「また歯科衛生士の仕事がしたいんです。」
11年前、建築中のみやけゆう歯科医院で彼女は
まっすぐな瞳でそう言った。
みやけゆう歯科医院の主任歯科衛生士である
「ささきちかこ」は、
開業1ヶ月前、医院前に掲げた
「歯科衛生士募集」の看板を見て
募集期間ギリギリに応募してきたのだった。
面接時の風景は鮮明に憶えている。
三宅が、
「来週から（開業前）研修だけどこれる？」
「仕事を頂けるなら来ます。」
そう言って彼女はウチのスタッフになった。
家庭を持ちながら常勤で
遅い時間まで歯科衛生士として
勤務をしていくのは
大変なことだったと思うが、
彼女は当初から
よく三宅の期待に応え、
今も医院を支えてくれている。
今から5年前、予防歯科を
取り入れる際に彼女はひときわ輝いた。
誰よりも積極的に研修会に取り組み、
歯科衛生士として自分の役目を
見つけたのだ。
私の医院に来る患者様の中に
彼女のファンは多い。
三宅とほとんど話さないのに、
彼女とは楽しげに会話をしてゆく患者様が
何人もいるのだ。
人気という点で院長としては
少々悔しい秘めた想いもあるのだが、
彼女がみやけゆう歯科医院の看板娘であることに
異論はないのである。
