小児歯科の看板を掲げていると
こどもが怖がって
待合室から診察室に入らない
ということはよくある話では
ないかと思う。
また、
泣きながら治療という場面は
みやけゆう歯科医院では日常茶飯事で、
スタッフも慣れてしまっている。
雲の上のような
三宅の先輩は、
「泣かさないのが小児歯科医なんだからー、
しっかり治療しなきゃダメよ。」
と鬼のような事を言うが
なかなか先輩のような境地まで
たどり着いてはいない。
◆
「今日はドリルするのぉー。」と
泣きながら訴えるYくんは
引きずられて診療室に入るやいなや
そう三宅に聞いた。
さて「ドリル」が
正式名称ではないのは
置いとくとして、
ここでどう返答するか
三宅はいつも<瞬間>迷うのである。
迷って本当の事を言う。
「少しだけドリルするよ。少しだけ。」
「ウワァァァァ・・・。」(出口に向けて逃げ出すYくん)
[がしっ。](母親や三宅につかまるYくん)
「しない。」とか言って
しちゃうことも出来るのだが、
どうもそれはできない
性分なのである。
「ドリル何秒するの〜(涙)。」
「う〜ん、360秒くらい。」
「ギャァァァァァァ。」(口を大きく開け、叫ぶYくん。)
治療が終わると
ニヤニヤして帰っていく
Yくんなのでした。