「少しでも朝食を食べないと」
中学の担任の先生は
よく三宅にそう言ったものである。
当時、三宅は全くもって朝食抜きであった。
さして夜更かししていたとも思わないが、
朝がめっぽう弱かったのである。
とても朝食など口には入らない。
覇気がない中学生を心配した
担任のT先生が、
何かの折に朝食を食べているかという話になり、
食べてないことがわかると
けっこう叱られたのであった。
それから40年あまり。
今では朝食も欠かさずにいる。
本人が一番びっくりだ。
T先生もびっくりなさるであろう。
北見に戻ってからさしたる連絡もせず、
同窓会でT先生と会って
お礼も言えないままにしていた。
しかし最後に会った時には
T先生はお身体を患っており、
ほどなく他界してしまった。
通夜の席で泣く三宅は
そっとT先生の声を聞く。
「朝食食べたか」