この話は数あるトムとジェリーの中でも
極めて特殊な話である。
何よりトムがほとんど出てこない。
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ジェリーがトムに書き置きをするところから始まる。
『トムへ。田舎に飽きたので光り輝くブロードウェイに行きます。
永遠にさようなら』
嬉々として汽車に飛び乗ったジェリー。
到着したマンハッタンは見上げるばかりのビル群に
美しい女性たち。
楽しい反面、
思いがけず何度も怖い思いをしてしまう
ジェリーだったが・・・。
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そもそもトムとジェリーの音楽は
大変優れたクラシック音楽であり、
キャラクターの心情を見事に表現する。
特にこの作品では効果音は最低限にして
音楽でほとんどを表した野心作だろう。
1930年代の音楽「マンハッタン・セレナーデ」が
都会の光と影を示していて、
どこか物悲しい。
小さい頃に三宅が見ていて
子ども心に胸が締め付けられて
ちょっと苦手な話だったが、
今見直すと愛おしい話である。
1945年はトムとジェリーが
一番油の乗った時期だ。
この次の作品「目茶苦茶ゴルフ」も名作である。